京都府立京都学・歴彩館
東寺百合文書WEB

百合百話 (ひゃくごうひゃくわ)

40. おいしい海の幸を送ります

2015-04-01

日本人の主食であるお米。なにはなくとも、白いご飯さえあれば…というかたも多いでしょう。

今のように、誰もが気軽に口にできたわけではありませんが、昔からお米は日本の食卓に欠かせないものでした。

「年貢」として納められたのも、多くはやはりお米です。たくさんの米俵が運ばれる絵、歴史の教科書などで目にしたこともおありではないでしょうか。

 

でも今回の話、実はお米の話ではありません。

全国各地それぞれの場所にさまざまな特産物があるように、その荘園がどんな場所にあるかによって、納められる年貢もやはりさまざまでした。

全国各地、80にも及ぶ東寺の荘園。

今回は、なかでもちょっとユニークな年貢を納めていた荘園について、お話しします。

 

と函3号 伊予国弓削島荘所当等注文(案)

と函3号「伊予国弓削島荘所当等注文(案)」延応元(1239)年12月日

 

伊予国(今の愛媛県)弓削島(ゆげしま)は、瀬戸内海にうかぶ小さな島です。今のしまなみ海道のあたり、因島(いんのしま)のすぐ南にあります。百合百話24でも、この弓削島についてお話しています。

弓削島は小さな島なので、あまり広い田や畑はありません。かわりに、周りは海に囲まれています。

この島からは、いったいどんなものが年貢として東寺に納められていたのでしょうか?

 

上の文書は、弓削島が東寺に寄進された際に出された、年貢のリストです。

漢字にふりがながふってある文書はめずらしく、他にはほとんど残っていません。当時の読みかたがそのままわかりますね。

 

まず4行目、「一 公物分(くもちのふん)」とあります。ここに挙げられているものが、東寺に納められる分です。少し後に、「一 預所得分(あつかりそのとくふん)」とあります。こちらは「預所(あずかりどころ)」(荘園を直接管理する者)の取り分です。

それぞれへ納められたのは、次のようなものでした。

 

◆公物分(東寺へ)          

○塩 250俵  

○白干の鯛 100こん(夏の分)・甘塩の鯛 100こん(冬の分)   ※「こん」は魚を数える単位

○牡蠣 8桶

○葛粉 1桶

○あらめ(海藻類) 少々

 

◆預所得分(預所へ) 

○塩 50俵

○小古の塩 730籠

○白干の鯛 100こん(夏の分)・甘塩の鯛 100こん(冬の分)

○牡蠣 10桶

○葛粉 1桶

○田 3丁3反半(米33石半)

○麦 12石

○網 2帖

○布 1反(在家ごと、三年に一度)

○あらめ(海藻類) 少々

○芋麻(麻糸の一種)少々

○麻芋(麻糸) 少々

 

どちらも、圧倒的に海産物が多いですね!

とくに、ここ弓削島荘では、塩がお米に代わるものとして納められていたようです。

文書の中、「公物分」の1行目に「しを(塩)二百五十俵 京定納百石 表別四斗定」とあります。「表別四斗定」とは、塩1俵を米4斗で換算する、という意味です。1石=10斗。米100石分の年貢に相当する分として、塩250俵を納める、ということになります。米俵ならぬ、塩俵でしょうか。

公物分、つまり東寺への年貢には、米などの穀類がまったく入っていません。弓削島荘は、塩と海産物の供給地として位置づけられていたのでしょう。

預所への分には、米や麦、さらに網、布、糸といった生活用品も入っています。預所は、京都にいる場合もあれば、現地で直接荘園を管理している場合もありました。このとき預所は現地にいて、そこでの生活必需品も納めさせていたのかもしれません。

 

また、「預所得分」のうちに「小古(ここ)の塩 730籠(りゅう)」とありますが、「籠」も「俵」と同じく、塩を数えるときの単位です。ここでは、ただの「塩」には「俵」、「小古の塩」には「籠」と、2通りの単位が併用されています。

弓削島荘に関する他の文書にも、ただの「塩」以外に、「膳所塩」「草手塩」「小弓塩」「秣塩」「神祭塩」など、いくつかの種類の「塩」が出てきます。「神祭塩」は、祭祀などにつかうための塩でしょうか。他のものは、製塩の方法の種類を示すものなのか、今に伝わらない塩田の名なのか…はっきりしたことはわかりません。

今も「○○の塩」といったブランドの塩があるように、当時から、塩とひとくちに言っても多様な種類があったようですね。

鯛も、夏の分と冬の分、それぞれ「白干」(塩に漬けずそのまま干したもの)と「甘塩」、保存用の干し方を変えて、納められています。

 

このように、東寺には全国各地の荘園から、多くの特産物が集まってきました。塩に鯛、牡蠣、海藻…今も、瀬戸内海の特産品として有名なものばかりです。

今と変わらず、当時の人びとも、おいしいものには目がなかったようですね!

(松田:歴史資料課)

 

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